コロナの影響で2022はインフルエンザが大流行するのではと予想されています。ここで気をつけたいのは、インフルエンザが重症化して起こるインフルエンザ脳症です。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった時に発病するもっとも重い合併症で、毎年数百人が発病しています。また、死亡率や後遺症が残る確率の高い重篤な病気です。
このインフルエンザ脳症の原因や予防法、そして販売薬の安易な使用の危険性について解説していきます。
インフルエンザ脳症の原因と予防
インフルエンザ脳症の原因は、ずばりインフルエンザへの感染によるものです。
インフルエンザ脳症の予防方法
インフルエンザ脳症を予防するためには、まずインフルエンザを予防することが一番です。ここではインフルエンザの予防法を解説します。
【1】個人的な感染予防対策
個人的な予防対策としては、次の方法がすすめられます。
- インフルエンザ流行時には人混みや感染者の多い場所への外出をできるだけ避ける。
- 外出するときはマスクを着用する。(ただし、マスクを着用してもウィルスはマスクを通過しますので絶対安全とは言えません。)
- 外出からもどったときには必ず手洗いとうがいをする。
- 室内の空気を清潔に保ち適度に保湿と加湿をする。(インフルエンザウィルスには低温と乾燥を好む性質がある。)
- ふだんから体力維持・増強し丈夫な体をつくっておき、規則正しい生活を送る。(ウィルスが侵入しても抵抗力が強ければ発症を防ぐことができ、発症しても重症化しにくい体をつくる。)
- インフルエンザの予防接種を受けておく。
※インフルエンザの予防に使われているワクチンは、生きたウィルスを含まない不活性ワクチンです。鶏卵を用いて精製したものなので、卵アレルギーの人が摂取を受ける場合には、かかりつけのお医者さんとよく相談することが必要です。
※予防接種の効果については議論は色々ありますが、高齢者に対しては発病する率や重症化する率を低下させることが立証されています。
※乳幼児に対する予防接種の効果については、現在も厚生労働省の研究班が調査中ですが結論は出ていませんが、発病する率や重症化する率を低下させる効果は期待されます。
【2】集団生活の場での予防対策
インフルエンザは、ヒトからヒトへ伝染していく病気です。
インフルエンザに感染した人の咳から飛んだウィルスが、他の人の鼻や口を通って呼吸器の粘膜へ移り発症します。(これを飛沫感染といいます。)
学校や幼稚園、保育園ではインフルエンザの集団発生が起きやすいので、次のような対策がとられています。
- インフルエンザと診断された子どもに対しては、一時的に登校や登園が禁止されます。(学校保健法という法律で定められています。)
- 学校や学級で爆発的に流行した場合は、一時的に閉鎖する措置がとられます。
集団生活の場は、学校や保育園・幼稚園だけではありません。病院、施設などでも、同様の措置がとられています。
民間の会社では、なかなかこのような措置は取りにくいかもしれませんが、インフルエンザ感染者は出勤しないなどの措置が必要です。
【3】インフルエンザとカゼの違い
カゼだと思い込んで市販薬を飲んだり、無理をしたりする人も多くいます。結果、インフルエンザウィルスをばらまいて集団感染を引き起こしてしまうこともあります。
そこで、インフルエンザとカゼの違いを知っておきましょう。
厚生労働省の公表している「インフルエンザの基礎知識」を参考に表にまとめました。
インフルエンザ | カゼ | |
症状 | 高熱・頭痛・関節痛・せき・のどの痛み・鼻水など | のどの痛み・鼻水・鼻づまり・せき・発熱 |
発症 | 急激 | 比較的ゆっくり |
症状の部位 | 強い倦怠感などの全身症状 | 鼻・のどなどの局所的症状 |
※38度~40度前後の突然の高い発熱
※全身の倦怠感・関節痛・筋肉痛
※鼻水がひきはじめではなく発熱などの症状の後に出る
上記のような症状であればインフルエンザの疑い高いので、すぐに医療機関にかかってください。
厚生労働省が公表している「インフルエンザの基礎知識」はとてもわかりやすいですよ。インターネット上での閲覧ができ、ダウンロードして冊子にすることもできます。ぜひ読んでください。
URLはこちらです。
安易な解熱剤の使用は危険!
解熱剤の使用がインフルエンザを重症化させ、インフルエンザ脳症の原因となることがあります。
ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸などの解熱剤を服用することで、インフルエンザ脳症の死亡率が上がることが厚生労働省のインフルエンザ脳症研究班の研究で判明しています。
また現在、色々な細胞が回復するのを薬剤が妨げてしまうことによるのではないか、という仮説が検証されつつあります。
特に15歳未満の子どもに対して使用を避けるべきものとしては、アスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛薬、そして上記のジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸です。
たとえ本人用のものであっても、他の病気のために処方されて使い残したものを使用することは絶対にしないように注意しましょう。
市販の解熱鎮痛薬や風邪薬の一部には、アスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛薬を含んだものがあるので、薬を購入するときは医師や薬剤師によく相談してください。
使用できる成分は、イブプロフェン系・アセトアミノフェン系・ロキソプロフェン系です。
成分と言ってもピンとこないこともあるかもしれないので、具体的に市販薬を下にまとめました。
使用を避ける市販薬
・ボルタレン
・バファリン
・アスピリン
・ポンタール
・セデス
・ケロリン
・ナロンエース
・ノーシン 等々
これらの薬は、ふだんであれば解熱鎮痛剤としてよく使用している薬だと思います。でも、インフルエンザの疑いがあるときやインフルエンザの時は避けてください。
サリチル酸系の解熱鎮痛薬や上記のジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸が含まれています。
インフルエンザの重症化を招きかねない、インフルエンザ脳症を起こしてしまうリスクの高い薬だということを覚えておいてください。
使用できる市販薬
・タイレノール
・イブ
・エスタックイブ
・ルル
・カロナール
・ロキソニンS
・漢方薬(葛根湯・麻黄湯など) 等々
解熱作用は弱いので、体温が1~2℃低下したら効果はあったと考えましょう。
また解熱剤を使っても熱が下がらないことはあります。そのようなときでも、6時間以上時間をあけて1日3回までにしてください。
これらの薬は使用可能とはいっても、インフルエンザの薬ではないということを理解しておいてください。
熱を下げる、症状を和らげるという一時的な措置として服薬可能ということです。
可能な限り早く医療機関を受診してください。医療機関を受診するときは、必ず服薬した薬を医師に伝えることをお忘れなく!
インフルエンザ脳症まとめ
インフルエンザ脳症の原因や予防法、解熱剤について解説してきました。
厚生労働省が公表している『インフルエンザの基礎知識』、厚生労働省・インフルエンザ脳炎脳症研究班編集の『インフルエンザ脳症の手引き』、厚生労働省の『インフルエンザ脳症ガイドライン』を参考にしています。
『インフルエンザの基礎知識』と『インフルエンザ脳症の手引き』は、医療従事者でない一般のかたにもわかりやすく説明されています。
いざというときに慌てないために、ぜひ読んでくださいね。